胸焼け、呑酸(のどまですっぱい液やたべたものがあがってくるような症状)、かぜとは異なる咳、のどの違和感、背中の痛みなど、様々な症状を呈する逆流性食道炎。その多くは、酸性度の強い胃酸が食道へ逆流することで生じます。その原因として頻度が高いのは、下部食道括約筋(胃から逆流しないように食道の出口をしめる構造)の収縮力が弱まることや、食道裂肛ヘルニアといって横隔膜を超えて胃が食道側(頭側)へ飛び出してしまう病気、ストレスやアルコール接種による胃酸過多などが挙げられます。胃カメラ検査で食道と胃の状況を評価し、食道のびらん(炎症)の状態を観て適切な内服治療を受けることで多くの患者様で症状が消失またはかなり軽減していただけます。

2019.10.9(水)19時〜、大阪で開催された食道・胃の病態シンポジウムに参加し、東都大学管理栄養学部教授の鈴木剛先生から食道・胃・十二指腸からの出血と対策についての講演を聞きました。高齢の方では、逆流性食道炎の症状が軽くても食道びらんの程度が強いことに多く遭遇します。内視鏡診断で中等度の逆流性食道炎と診断された方を対象とした臨床研究では、65歳以上の方の症状がある割合は、65歳以下の方の約半分と報告されています。高齢の方は、血液をさらさらにする薬や、抗凝固剤、粘膜障害を起こす作用のある鎮痛薬などを服用されていることが多いことから、逆流性食道炎などのびらん病変を見逃していると、深い潰瘍や出血を来す割合が高くなります。適切に診断して治療することが、消化管出血など、時に命取りになる病態を回避するには大切です。繰り返しになりますが、逆流性食道炎の診断には胃カメラ検査が有用です。気になる症状のある方は、どうぞ当院にご相談ください。