最近になって、先進国(米国や英国など)では、認知症患者数を減少させることに成功しているというすばらしい報告がなされています。一方、日本では増加の一途で約500万人とされている現在患者数が、10年後には1.5倍の約750万人に増加するという予測がなされています。先進国のメンバーではありながら、日本と欧米での患者数の増減として現れる認知症対策効果の違いはどこからくるのでしょうか。

この点についてのup to dateな情報を、2017.09.16(土)17時〜、上本町で開催された中河内認知症研究会に参加し、国立循環器病研究センター脳神経内科部長の猪原匡史先生から講演をお聴きしました。

認知症の発症・進行と、アミロイドbタンパクとタウ蛋白が脳内に異常蓄積することは、密接に関連することが明らかとされています。このことから、この2つのタンパクをターゲットとした創薬開発がすすめられていますが、現在のところ、著効を示す薬は開発されていません。

それでは、欧米先進国では、どのようにして認知症患者数を減らすことに成功したのでしょうか。それは、認知症の進行に、血管性病変の進行が関わっていて、それら血管性のリスクを積極的に減らしたことによると理解されています。具体的には、動脈硬化の予防、高血圧治療による脳出血の予防、喫煙などの生活習慣の改善、そして、心房細動などによる脳梗塞の予防などです。これらに対しては、現在の治療で十分対応が可能であることから認知症の予防という意味合いでも、早めからの、心臓と血管の健康化を積極的に目指す大切だと理解できます。