日本では年間約13万人の方が胃がんと診断されています。胃がんの発生をすこしでも予防するためには、まずは、どのような方に多く胃がんが発生するかを理解することが大切です。最近の研究では、胃がんの99%以上でヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)感染を伴っているとの報告が複数の施設からなされています。つまり、胃がんの大半がピロリ菌感染と密接に関連しているわけです。胃粘膜がピロリ菌に感染すると、胃粘膜の炎症が慢性的に続き、粘膜障害、粘膜萎縮、腸上皮化成(腸の粘膜に変化すること)などが生じることで胃がんが発生すると理解されています。

ピロリ菌感染から胃がんの発生を観てみると、ピロリ菌に感染している方は年間約0.5%の率で胃がんが発生します。実に1年間という短期間で200人に1人と非常に高い割合で胃がんが発生するわけです。20年間だとなんと10人に一人となります。一方でピロリ菌に感染していても内服治療で除菌ができた方では胃がん発生は年間約0.2%、つまり500人に1人へと発生リスクが半分以下に低下します。これらの解析結果から、胃がんの発生の予防には、ピロリ菌感染の有無をなるべく早い段階で把握し、ピロリ菌感染が判明した場合には、除菌治療を受けられることが大切であることが理解できます。

2019.7.31(水)16時〜、大阪市立大学で開催された胃の治療webセミナーに参加し、順天堂大学医学部消化器内科教授の永原章仁先生から漢方療法を含むエビデンスに基づいた胃炎胃がん治療戦略の講演を聴きました。

ピロリ菌感染の多くが、幼少期の両親からの口移し感染が原因とも言われております。ご家族にピロリ菌感染や胃がんの方がおられる方は早い段階でのピロリ菌感染検査がおすすめです。ピロリ菌感染の把握、胃粘膜炎症の把握そして胃がんの早期発見には胃カメラ検査が欠かせません。すこしでも苦痛少なく胃カメラ検査を受けていただくために、当クリニックでは、極細径経鼻内視鏡を導入しております。また、より正確な胃の病状を把握するため、画像強調観察が可能なレーザー光源を搭載したシステムにて、胃カメラ観察を行っております。日曜日の胃カメラ検査も行っておりますので、ご相談ください。