日本大学生理学教室教授三木敏夫先生が大会会長、私大橋がLocal Organizing Committee Chairmanとして2025年10月22〜25日、虎ノ門ヒルズにて開催致しましたCell Transplant and Regenerative Medicine Society(CTRMS, 国際細胞移植再生医療学会)国際会議報告の第3報です。

300名を超える研究者・医師が世界から集まり、熱い討論がかわされました
パーキンソン病、糖尿病は共に、患者数が増え続けている疾患。一方で、パーキンソン病においては、完治にむすびつく現行治療が存在せず、また、I型・II型糖尿病治療においては、治療に難渋する病態が多くあるという課題があります。ですので、両疾患共に新規治療の開発が切望されている現状です。本国際会議Plenary Sessionにおいて、両疾患で新規細胞治療を展開している、2名の先端研究者に講演を頂き、私・大阪大学招聘教授大橋一夫と、アリゾナ大学Klearchos Papas教授が座長を担当しました。

左から、京都大学iPS研究所所長高橋淳教授、私・大阪大学招聘教授大橋一夫、上海Shanghai Changzheng病院臓器移植部長Hao Yin教授、アリゾナ大学外科/細胞移植部長Klearchos Papas教授
パーキンソン病新規治療について、京都大学iPS細胞研究所所長の高橋淳教授から、日本と米国で開始されているiPS細胞から分化した神経細胞を注入移植するパーキンソン病細胞治療の進捗状況について講演をいただきました。移植iPS由来細胞がパーキンソン患者の脳内において、ドーパミンを長期間産生し続ける事に成功し、全員ではないものの大多数の患者においてパーキンソン病症状の改善がみられているという心強いる成果報告をいただきました。
糖尿病新規治療について上海のHao Yin教授に講演いただきました。慢性膵炎が強度に進行した場合、膵臓に石ができたりすることで、膵臓全部を摘出しなければならない状況があります。膵臓全部を摘出すると、インスリンを分泌する膵島組織も一緒に全て摘出されてしまうため、インスリンが出なくなり重度の糖尿病が生じます。摘出膵臓から、インスリンを産生する膵島組織を抽出し、それら組織を門脈という肝臓へ流れる血管に注入移植する細胞治療で、膵臓摘出後発声の糖尿病を軽いレベルにとどめること成功されました。また、別の試みとして、糖尿病患者自身の脂肪組織から幹細胞を樹立し、それらをインスリン産生する細胞へと分化させ、糖尿病患者自身に戻し移植する新規治療を開発し、すでに10名以上の治療で安全性が確認できたとの報告がありました。
現在はまだ治験段階ではありますが、この2つの細胞治療がさらに発展し、そして他の進行性・難治性疾患(例えば、肝硬変、進行性筋萎縮症、閉塞性換気障害、潰瘍性大腸炎など)への応用展開へと続いていくことに大きく期待したいものです。高橋教授、Yin教授のこれまでの成果に敬意を表し、学会を代表して感謝状をお送りしました。
