当院では、痔核(イボ痔、外痔核、内痔核)、痔出血、切れ痔、腫れる痔(肛門周囲膿瘍)、痔瘻などの診療・治療にも積極的に取り組んでおります。急を要する状態の場合には、受診当日の手術を行う場合もありますし、より専門的治療が適切と考えられる場合には一次治療を当院で実施し、肛門診療の専門病院と連携の基に診療を進めていく場合もあります。

“肛門付近が腫れて痛む“というお悩みで来院された方では、細菌感染が進行して膿瘍を形成する肛門周囲膿瘍というご病気の場合があります。超音波検査で膿瘍の状態を把握した上で、皮膚を切開して膿みを外に出す手術が必要な場合もあります。また、肛門周囲膿瘍は、肛門と直腸の境界部での炎症(痔瘻)が多くの場合の原因となっていますので、肛門周囲膿瘍の治療を行いながら、根本原因である痔瘻の治療についてのご相談をすることもあります。

2023年9月9日(土曜)15時〜、奈良県橿原市で開催された、奈良肛門疾患懇談会に参加し、奈良県立医科大学中央内視鏡部教授の小山文一先生から、“クローン病肛門病変のエビデンス”についての講演を聞きました。クローン病とは、小腸や大腸に炎症や潰瘍が生じる炎症性腸疾患の一つで男性にも女性にも発症します。難病指定疾患の一つで、正しく診断をし、適切な治療を行う必要があります。クローン病の初発症状の一つとして肛門疾患は重要で、大腸局所に深い炎症を生じるために、肛門近傍で膿瘍(肛門周囲膿瘍)が生じることに起因します。当院で肛門周囲膿瘍の手術治療を行った方の中で、その後受診された専門病院にてクローン病の診断に結びついた方が複数おられます。奏功する治療選択肢が増えてきており、通院加療は必要であるものの、多くの方が元気に仕事従事されておられます。

クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、すこしでも早く診断にたどり着くことが大切です。肛門および肛門周囲でお悩みの方は、ご相談ください。