“氷をガリガリと食べたくなる”、“氷がそばにあるととても安心する”、“寒くても氷をほしく感じる”などの症状は、氷食症に特徴的な症状です。氷食症は、体内の鉄不足が原因で発症し、多くの場合、鉄欠乏による貧血(鉄欠乏性貧血)を伴います。氷食症はかなり以前から知られている病気で、例えば1970年のNature誌ではこの病気の発症メカニズムを動物実験で立証した研究報告がなされ、鉄の補給が治療法であることが知られています。しかしながら、具体的にどのような補給治療がベストなのか、どれくらいの補給で症状が改善するのか、治療上の注意点など、補給治療に関する具体的な論説は、医学書も含めてほとんど見当たらない状況です。

2020.12.15(火)16:00〜web形式で開催された第27回肝細胞研究会にて、「氷食症に対する鉄剤静注療法」について研究発表講演を行いました。当院を受診され氷食症と診断した患者様のデータを集積し、鉄剤治療前後の症状変化や血液データを解析し、氷食症の治療において一つの提案を行いました。講演時は最先端の研究者の方と有意義な討論となり、講演後には聴講の方からお知り合いの方の氷食症のお悩みについてメール相談も多数あり、治療の進め方などをさらにお伝えしました。

鉄不足は、貧血を引き起こすだけではなく、肝臓や心臓の細胞内でのエネルギー産生不良や、体内の疲労物質の蓄積を引き起こします。鉄を補給することが治療として行われるわけですが、一方で、鉄を過剰に摂取することは、体内での炎症反応を引き起こすなどの不利益も発生することが危惧されます。ですから、貧血の患者様お一人お一人の鉄不足状態に見合った鉄補給方法を判断していくことがとても大切です。貧血や氷食症症状などでお悩みの方はご相談ください。