最近よく話題にあがる潰瘍性大腸炎。気をつけるべき症状は、繰り返す下痢と腹痛です。病状によっては、血液が便に混入することもあります。また、粘液性の便汁として悩まれている方もおられます。

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性腸疾患です。直腸(肛門からはいってすぐのところ)の粘膜に炎症が発生することを基本とします(写真上・中参照)。病状によっては、直腸からS状結腸へと、時には、直腸から大腸全体へと炎症が広がることもあります。ですから、まずは、直腸粘膜を観察することが、潰瘍性大腸炎の診断の1歩といえます。当院では、肛門・直腸鏡による直腸粘膜観察を、随時行っております。直腸観察の結果、大腸内視鏡検査が必要と考えられる場合は、経験豊富な専門医療機関をご紹介いたします。下痢と腹痛の繰り返しで悩んでおられる方は、どうぞご相談ください。

2020年9月5日(土曜)、奈良県橿原市で開催された肛門疾患研究会に参加し、奈良県立医科大学消化器・総合外科病院教授の小山文一先生から、潰瘍性大腸炎およびクローン病における肛門病変診療についての講演を聞き、治療法についての意見交換も行いました。潰瘍性大腸炎の方は、年々増加してきております(写真下)。2000年の統計(日本)では6万人でありましたが、2015年では18万人と増え続けており、稀な病気ではなくなっています。

写真上:当院での直腸観察をきっかけに潰瘍性大腸炎が判明した方の大腸内視鏡像。直腸は、炎症によるむくみとただれが顕著な粘膜で覆われています。

写真中:同じ方の横行結腸の粘膜。とても艶やかな粘膜で、血管が透けてみえており、炎症が波及していないことが見てとれます。

写真下:潰瘍性大腸炎(左)、クローン病(右)ともに、年々患者数が増加しています(小山先生の許可の下掲載)。