体の血糖制御は、膵臓の中にある膵ラ島という組織が中心的役割を果たしています。膵ラ島は主に2種類の細胞で構成されています。一つは、血糖を低下させるインスリンという内分泌物質を産生するb(ベータ)細胞。もう一つは、血糖を上昇させるグルカゴンという内分泌物質を産生するa(アルファ)細胞です。これまでの糖尿病治療は、インスリン産生を中心とした、つまりb細胞の機能保持を中心とした治療展開が中心でした。しかし、最近、血糖を上昇させるa細胞の過剰機能が高血糖を引き起こす原因の一部として着目され始めています。

2019.08.31(土曜)17時、梅田で開催された糖尿病治療を考える会に参加し、大阪急性期総合医療センター糖尿病内分泌内科診療主任の桂央士先生と、グルカゴンを中心とした糖尿病治療の工夫について意見交換を行いました。私は、2007年から、東京女子医科大学と大阪大学で肝臓・膵臓再生医療プ開発のログラムディレクターとして研究活動を行っていた際のテーマの一つに、福島県立医大外科主任教授(現:大阪急性期総合医療センター総長)の後藤満一先生と共同で、膵ラ島の生体内構築を目指した研究を行っておりました。ばらばらにしたa細胞とb細胞を用いて機能的な膵ラ島組織体を実験動物内に作製することに世界で初めて成功した(文献1,2)のですが、その際にa細胞は膵ラ島の外郭に、b細胞は内側に自然と配列するという特徴がありました(写真下)。これは、ab両細胞が協調して血糖の調節にあたること、そしてそのための細胞配置に意義があることがうかがえる興味深い現象です。

a細胞が過度に働きすぎると持続的に血糖が高くなってしまうのですが、最近ではa細胞の働きを落ち着かせる薬剤も開発されてきています。また、タンパク質の過剰接種はa細胞機能を高めてしまうとの研究報告もされています。

食事療法は最大の糖尿病治療といわれておりますが、従来の糖分・炭水化物接種制限に加えて、適切量のタンパク質接種を心がけることもa細胞—グルカゴンを軸とした治療展開に重要と考えます。また、糖尿病状態によっては、a細胞機能にも着目した内服処方も行っておりますので、糖尿病がご心配な方はどうぞご相談ください。

文献1 Shimizu H, Ohashi K, Utoh R, Ise K, Gotoh M, Okano T. Bioengineering of a functional sheet of islet cells for the treatment of diabetes mellitus. Biomaterials, 30:5943-5949, 2009.

文献2 Saito T, Ohashi K, Utoh R, Shimizu H, Ise K, Suzuki H, Yamato M, Okano T, Gotoh M. Reversal of diabetes by the creation of neo-islet tissues into a subcutaneous site using islet cell sheets. Transplantation, 92:1231-1236, 2011.